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組織液と末梢血と静脈血の間

以前、こちらのブログエントリーで
「血糖測定値はあくまで血糖変動の傾向を見る上での目安であって、
測定方法や測定部位によって誤差があるんですよ」という話
を書きましたが、
当院CGM担当の匿名希望taroさんから、
それに関連する検証ネタを提供いただきましたので、ご紹介。


2007年初冬---。
当院が研究目的で個人輸入したCGMの担当者となったtaroさんが、
当院で初めての被験者となりながら機器の取扱いを習得していた当時、
日本国内にCGMに関する詳細情報がほとんどない中、
taroさんは胸中、率直に抱く疑問がありました。



CGMで測定する間質液(組織液)のブドウ糖量は、
静脈血よりも5~10分ほど遅れるために
補正計算された測定値が出るそうだが、
それはどの程度信頼できる値なのか?

本当に静脈血の血糖変動をきちんと反映できているんだろうか?

高血糖域や低血糖域では測定誤差が生じるとされているが、
その誤差は実際のところ、どの位のものなのか?



・・・ということで、彼が考えた検証シナリオがこちら。

 いつもより少なめの食事をとったのに、
 うっかり多めのインスリンを注射してしまった。
   ↓
 低血糖が発生。
   ↓
 低血糖処置としてブドウ糖液を経口摂取して血糖値を回復。
  ↑↑↑
 この過程を、CGMとSMBGと静脈採血でチェックしてみよう!


確かにこれだと、‘急激な’血糖降下、血糖上昇の変動時の
測定誤差も確認できますネ。




というわけで、
いつもより少なめの500kcalの食事をし、
いつも使用している混合型のインスリンを
いつもより若干多めの14単位注射したところで
CGMを装着し、測定開始!

5分毎の採血は流石に
「(痛すぎて)無理~~(涙)」
ということで、以降、血糖が確実に下がって行く時の、
あのイヤ~な体感覚の中、
10分毎にSMBGと静脈採血。

この血糖変動をCGMのグラフにプロットしたものがこちら。
  ↓クリックすると拡大表示します。
20120312090134318.jpg

赤がSMBGで指先穿刺で測定した末梢血の血糖値、
青がCGMで測定した間質液(組織液)を補正計算した血糖値、
緑が静脈血の血糖値、です。

SMBGCGM共に、
静脈血の血糖変動をよく反映している~というのは一目瞭然、ですね。

5~10分遅れるとされる間質液(組織液)の血糖値も、
静脈血の血糖値にかなり近い値まで補正計算されているのが
確認できます。

というわけで、総体的に見て、
「これなら、患者さんにCGMを使っていただいて、
 確信をもって、処方変更できる!」
と、おおいに安心したtaroさんでありました。



また、末梢血の赤のグラフの推移を見ていただきますと、
このブログの以前のエントリーでお話していた、
静脈血よりも末梢血(SMBG)
7~10%高値を示す
、という状態が、
これで、しっかり確認いただけるかと。

特に、血糖が急激に下がる、急激に上がる、局面では、
末梢血(SMBG)が高くでる傾向がある、というのがわかりますよね。





さらには、この実験において、
taroさんが‘面白い’と注目したのが、こちら。
低血糖処置後の血糖変動。
低血糖処置

「低血糖処置をとって
 10~15分たつと血糖が上がってきて
 低血糖症状がなくなりますから」

・・・と説明されるところですが、実は、測定値の上では、
10分後までは血糖値、そんなに上がってきてないんです。

測定値上ではっきりと正常域までの血糖上昇が確認できるのが
20分後。

そうなると、例えば低血糖になって処置した時、
処置後10~15分後の段階でSMBGをして、
「血糖値、まだ上がらない!!」
と判断してしまって、ここで追加処置として、
ブドウ糖や炭酸ジュースなどの
消化吸収が早く、速効で血糖になるものをとってしまいますと、
その後、急激な高血糖に転じてしまう、ということであります。

低血糖処置をとれば、確実にブドウ糖は血液に供給されます。
ただし、処置直後の10~15分間は、
まずは脳が不足した糖質を必死で補っている時間帯であるため、
この時間帯ではまだ血糖測定値には反映してこないんだ、
・・・ということを抑えておいていただきたいな、と。




また、医療スタッフが
低血糖処置後に、次の食事までの時間が長いようであれば、
おにぎりなどの炭水化物を
 1単位くらいとってくださいね。」

・・・という言葉には、
‘次の食事の時間までの低血糖予防’をするにあたって、
‘血糖値の急降下から急上昇に転じて、
 血糖変動の幅が大きくなることがないように’
という目的があることもおわかりいただけるかと。

消化吸収がよく、短時間で血糖と化すブドウ糖やジュースと違って、
お米やパンなどの炭水化物だったら、
ブドウ糖になるまでに胃腸での消化吸収に時間がかかります。

ここでは、あえて、消化吸収に時間がかかる食品
をチョイスいただくことがポイントになります。

CIMG1648.jpg
おにぎり1単位のサイズ、この位です!

低血糖時の補食も、
この先の血糖変動をある程度予測して、
目的に応じて使い分けることを意識していただければ、と。




ただ、この「この先の血糖変動をある程度予測」というのも、
「完璧」に読み切ろうと思えば、
補食の量以外にも、いろんな条件を勘案することが
必要になってきます。

例えば、今回の実験の際には、
低血糖処置後に血糖値があがりすぎてしまい、
急遽、超速攻型インスリンを打って
血糖値の回復をはかっています。

原因としては
通常0.5~1単位を取って下さい~とおすすめする低血糖処置において、
今回の場合は、
‘いつもより食事摂取量が少なかった’
‘インスリン量を通常より多く打っている’
という2つの実験条件を勘案して、
通常より多めの2単位分のブドウ糖を摂取したことが
要因としては大きいとは思われますが、
もう1つ推測される条件としてあるのが、
この際の精神状態

今回の低血糖発生については、
あらかじめ意図的に設定した実験のストーリーで行っていますので、
現象としては、‘下がる、下がる’という危機感を感じながらも、
それに逆らって、‘血糖値を測定しなきゃ!’~と、
集中力を高めていた精神状態であった、ということ。

血糖値の変動は、
前後の食事の摂取量、運動の状況という物理的な条件のみならず、
精神状態含めた
その時の心身のコンディションもまた
大きく関係してきます。


例えば、1型DMの血糖コントロールマスターからよく聞く話として、
手元に血糖をあげる食べものや飲みものが何もない状況で、
予期せぬ低血糖になってしまった場合の、
やむにやまれぬ最終手段として、
大嫌いな人の顔を思い浮かべて、
「ちくちょ~、ふざけんなっっ、
 お前なんか××って×××しまえっっ!!」
   (一部不適切な発言は自粛(笑))
などとテンションあげて思い詰め、
自分の身体を無理矢理‘戦闘モード’にすると、
血糖値をあげることができるのだそうで。

身体が戦闘モードになりますと、
アドレナリンなどのホルモンが分泌されまして、
食事なしでも全身の細胞に糖エネルギーを供給して
闘える状態にするために、
肝臓が自らの中にためこんでいた糖を
血液中へ放出(グリコーゲン分解&糖新生)して
血糖をあげようとします。

この人間の身体の中に備わっている
戦闘モード突入時の代謝システムを利用しているわけでありまして、
非常に、利にかなってはいるわけですが、
なかなかの荒技でありますね(汗)。
IMG_2219-1s.jpg
戦闘モードの猫さん

となると、今回、taroさんが、
‘意識して’低血糖を起こしたこの実験では、
‘下がる’ という危機感
はっきり意識しながら低血糖に陥っているために、
擬似的な戦闘モードのスイッチが入り、
血糖をあげるホルモンが早めに分泌される状況ではなかったか、と。

このために、補食による低血糖処置と
肝臓からの糖新生が重なり、
血糖値の立ち上がりが早かったのではないか、と。

折しも食後の時間帯です。
肝臓の方も、通常より多めに注射したインスリンの働きによって、
ブドウ糖をグリコーゲンにかえて
たっぷりと補充完了しているタイミングでもありますしね。


・・・と、この辺は、あくまで、こういうことも考えられる、という
 ‘推測の物語’ なわけですが、
人間の身体組織の様々な機能を考慮すれば、
こういう可能性もゼロではない

〜という先輩諸氏の体験談を、頭のどこかに置いておくと、
時におこる不可解な血糖変動を解釈する上で
役立つのではないかな、と思いまして、
あえて、可能性のファクター、としてここでご紹介させていただきました。



今回のブログの内容については、
前半は限定された条件での個人の体験、
後半はtaroさんの話を聴いた個人の解釈、
・・・でお送りしております。

あくまで、多様な血糖変動パターンの中の
1つの FACT として参考にしていただければ、と。






・・・というわけで、
当院の患者さんに、
より正しく適切な血糖コントロールが提供できるよう
CGM、SMBG、静脈採血検査での比較測定を自ら決行し、
3時間の間に静脈に18回、指先に18回
針を刺し続けたtaroさんにぜひとも賞賛の拍手を!!

痛みに耐えてよく頑張ったっっ!!!

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日経メディカル12月号に載りました!

今月発売の「日経メディカル」12月号

nikkei_2.jpg

P.24~25のTREND VIEW(トレンドビュー)のコーナーにて、
この10月にグルコース持続モニター(CGM)が薬事承認されたことを紹介する記事が企画され、
それについて、当院院長と当院のCGM担当の吉田薬剤師がインタビューを受けまして、この度、12月号で掲載の運びとなりました。

nikkei _1

CGMについては、陣内病院においては、これまでこの商品を香港から個人輸入し、
血糖コントロールの不良な患者さんを対象に、
「臨床研究」として検査を行っていたところです。

日本では保険適用がありませんから、
検査費用はすべて、当院の研究費からの持ち出し。
それでもあえてCGMを用いて検査を行っていたのには訳があります。


現在、日本においては、
糖尿病患者さんの血糖日内変動を確認するための保険適用の検査としては、
血糖自己測定(SMBG)がありますが、
1日に数回しか確認できない血糖自己測定(SMBG)だと、
‘測定を行った時間では、たまたま問題となる高血糖や低血糖がなかっただけ’
・・・という状態がどうしても発生してしまいます。

1日の中で、いつ、どこで、どの程度の低血糖や高血糖が起きているのか、
日中の血糖変動の幅がどれくらいなのか、

といった状況を、血糖自己測定(SMBG)だけでつかむ事はかなり困難。

この辺は、これまで、患者さんから細かい生活状況を根掘り葉掘り聴き取りまして、
断片的な血糖自己測定値の情報と病院での検査データをつきあわせて、
医師が‘匠の心’で読み解いて診断していた部分でありました。

ここに、CGMによる『血糖日内変動グラフ』という手がかりが与えられると、
問題となる高血糖や低血糖がいつ起きているかが一目瞭然!

例えばこんな感じ↓↓
medi-tri-mix.jpg

この手がかりがあれば、何が良好な血糖コントロールを阻害する原因になっているかを
より正確につきとめることができます。

原因がわかれば、現在は、いろんな働きのある薬剤がそろっていますから、
内服薬やインスリンで作用のピークを高血糖のピークにあわせられるよう、
処方を変更したり薬剤を組み合わせたりして対処できます。

患者さんとしても、
「自分の血糖値はこういう動きをしてるんだ」
・・・と、自分の目で確認することができれば、
日常生活においてどういう事に気をつけたらいいか、
お薬がどんな風に効いているのかが、わかりやすいですよね。
今まで漠然としていた「血糖コントロール」が、
かなりイメージしやすくなります。


血糖コントロールがなかなか安定しない患者さんに、
より速やかに、オーダーメイドな血糖コントロール方法が提案できるということで、
非常に有益な検査機器であります。




で、この度の10月のCGMの薬事承認によりまして、何が変わったかというと、
「個人輸入せずとも、国内で機器やセンサーを購入することができるようになった」
ということのみ。

承認されたのは、日本メドトロニック株式会社のメドトロニック ミニメドCGMS-Goldという商品のみ。

残念ながら、保険適用はまだ認められておりませんので、
依然、全国誰もがどこでも受けられる保険診療の検査ではなく、
当面はあくまで「臨床研究」としての検査となります。

また、この度、薬事承認されましたCGMS-Goldについては、
お腹に装着する測定センサーから測定器までをケーブルでつなぎまして、
ケーブルを介して測定データを送信、
測定結果は、検査終了後にパソコンにデータを抽出してから、という仕様のものでありまして、
これ、商品としては、ひと世代前のものなのです。

海外では、
・測定データをケーブルではなく無線で送信できる
・装着中にリアルタイムで血糖値やトレンドグラフまでが確認できる
・知らせてほしい血糖値をブザーでお知らせする
など、血糖コントロールを助けてくれるいろんな機能が付加された商品が主流になっており、
メドトロニック以外にも数社が商品を開発、すでに販売しているところなのですが、
日本においては、これらの商品が無線でデータを送信する為に用いる電波帯域が
携帯電話やアマチュア無線などの電波帯域と重なってしまう、ということで、
日本での電波法をどうクリアするか、の法的な問題が壁となっており、
こちらもまた、当面は使えない見込みです。



当院としては、1日もはやく、このCGMが保険適用の検査となり、
全国の糖尿病患者さんの血糖コントロール改善のための診療で用いられる検査機器として
活用できるようになって欲しいと考えています。

今回の、日経メディカルの取材を受けたことが、
微力ながらも、その後押しとなれれば、と心から願っています。





尚、このCGMS-Goldの装着レポートについては、
昨年、糖尿病教育ネットワークKUMAMOTOさんのブログにて紹介させていただいております。
興味がおありの方は下記リンクからご覧下さい。

CGMSによる連続血糖測定~その1

CGMSによる連続血糖測定~その2
CGMSによる連続血糖測定~その3
CGMSによる連続血糖測定~その4





CGMSを個人輸入

院長が厚生労働省に申請しておりましたCGMS個人輸入の許可がおりまして、はるばる海をこえて当院に2台のCGMSがやってきました。


CGMSとはContinuous Glucose Monitoring Systemの略。
連続的にグルコースをモニタリングするシステム~というわけで、これを装着すると、血糖値を連続して測定できます。これによって1日の血糖値の動向を把握することが可能になるわけです。

原因がよくわからない低血糖や高血糖がある方、血糖値が安定しない方は、こちらを装着して行動記録をつけることで原因をつきとめることができるのでは?と期待しています。

器械や検査の詳細については、糖尿病教育ネットワークKUMAMOTOさんのブログの11月のエントリーにてご紹介させていただきました。
cgms2.jpg

個人輸入から測定体験記まで、その1からその4の連載エントリーとなっていますので、興味がおありの方はそちらをご覧下さい!

また、CGMSは日本の保険診療に使える検査機器としては未承認のため、保健診療外の臨床研究の枠での検査ということになります。詳細については、診察時に主治医にご相談ください。

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医療法人社団陣内会 陣内病院(じんのうちびょういん)

Author:医療法人社団陣内会 陣内病院(じんのうちびょういん)
1977年創立。平成24年で開院35周年を迎えました。
「糖尿病のある豊かな人生」を診療理念のもと、地域の糖尿病治療センターとして、糖尿病の診療と研究、啓発教育事業などに力を注いでいます。

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