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完全に正しい血糖値?!

先日、コメント欄でご質問いただきました
血糖自己測定に使います簡易血糖測定器の
「測定値の誤差」にからんだ話をもう少し。


簡易血糖測定器の精度については、
国際規格ISO15197という国際標準がありまして、
そこには、こういう規定があります。

  血糖値75 mg/dl未満では ± 15 mg/dl、
  血糖値75 mg/dl以上では ± 20% 以内に
  測定値の95%以上が入っていること

つまり、測定器の精度の審査基準の中に、
既に 「この位の誤差はあってもOKですよ」 という
誤差の基準が定められている
わけであります。


この辺が「簡易」測定器たる所以でありますし、この事からも、
『完全に正しい血糖値』のでる血糖自己測定器というのは、
世の中に存在しない、

というのが端的にお解り頂けるのではないかと。



もちろんどのメーカーさんも、
それぞれ開発した独自の技術を駆使して商品開発されていますが、
この誤差を完全に克服することはできていません。

それぞれの技術に特徴があり、それぞれに一長一短あります。

何より、測定の対象が、
常に細かい変化を続ける人間という生き物である、
ということが『完全に正しい血糖値』の測定を難しくします。


厳密に『完全に正しい血糖値』を出そうとするならば、
まず、全身をかけめぐる血管からすべての血液を抜き出して、
血液濃度のばらつきがないようにシェイクしてから血糖値を測定する、
という作業が必要になります。
全身の血管
・・・これ、生きている人に対しては、まずできませんよね(笑)。

となると、人間の身体のどこか一部から血液を採取して測定する、ということになります。

その採血にあたって生命へのリスクが低く、かつ、よりたくさんの情報が得られるのが、
静脈血を注射器でとって測定する形。
これが病院で一般に行なわれている血液検査であります。

P1120981.jpg

ただ、これだと、病院で、しかも
注射器で採血する技術のある医療従事者しかできない検査となります。


糖尿病治療においては、生涯にわたって
よりよい血糖コントロールを達成しようとするわけですから、
病院の中だけでない、その方の普段の生活の中での血糖日内変動を知りたいわけで、
そうなると、いつでも、どこでも、誰でも簡単に測定できる測定器が欲しい。

そのニーズを満たすべく、開発され商品化されたのが、
簡易血糖測定器、なのであります。

P1110122.jpg

簡易血糖測定器の場合、
指先などの末梢血管から血糖値を測定することになるわけですが、
基本的に採血部位が違えば、測定値に誤差は現れます。

実際、病院で採血する静脈血の『血糖値』に比較すると、
末梢血の『血糖値』の方が7~10%程度高い結果がでるのです。




また、 血糖値 とひとくちにいいますが、
血糖値を評価すべく行う測定方法そのものも、
実は非常にたくさんの種類がありまして、
測定方法が違えば、その値も変わってきますし、
そこにも、ある程度の誤差は生じます。


例えば、昨年保険適用となった
CGM(持続血糖測定)で測定する『血糖値』になりますと、
おなかの間質液(血管の外にあり細胞の外にある体液)
の糖濃度を測定するものになりまして、
実際のところ、直接、血液から血糖を測っているものではありません。

2-cgms.jpg

CGMの場合は、この間質液の糖濃度が、
血液の血糖変動とほぼ平行して動く

・・・という特性を利用して血糖の日内変動の傾向をつかもう、
という性格の検査になります。

このため、CGMの測定結果をデータとして出す際には、
間質液の糖濃度の変動を、血糖変動に換算してデータを出すことになるのですが、
この補正計算の元データとして利用されるのは、
実は、血糖自己測定で使います簡易血糖測定器。

結局、元来多少誤差のある簡易測定器の測定値を元に、
CGMのデータを組み立てていることになります。

従って、こちらも実は
『完全に正しい血糖値』を測る検査ではないのです。

にもかかわらず、なぜ、こういう測定方法をとるか、といいますと、
就寝中も含め、数日間連続した形で
その方の血糖日内変動の傾向を把握したい
、と思った場合に、
血管の中にセンサーを入れて血糖値を直接測定するよりも、
お腹の中にセンサーを入れて、間質液によって間接的に測定した方が
生命へのリスクが断然少ないからです。

CIMG1081.jpg
院長CGMを装着、の図。
ちなみに当院にある検査機器はすべて、
院長自らの身体で、その安全性と信頼性を確認済みであります。



ここでもう一点、知っておきたい事がありまして、
同じ体内の静脈血と末梢血でも糖濃度に違いがあるのに、
本来、人間は、どこの血液の糖濃度を基準に
自らの血糖をコントロールしているのか?

ということ。

これ、肝臓の門脈、になります。
腸でブドウ糖をたっぷり吸収した血液が集まって、
最初に注ぎ込む臓器である「肝臓」の、入り口部分にあたる血管です。

人間は、この肝臓の門脈の血液で、血糖を感知し、
血糖が高くなればインスリン分泌の指令を出して、
血液中のブドウ糖を血管の外の細胞に送り出し、
血糖が低くなれば、血糖をあげるホルモンの分泌を指令して、
肝臓での解糖や糖新生を促して、血糖を増やしています。

これによって、生命維持のための基礎代謝と脳の活動を保障できて、
なおかつ血管を傷めることがない範囲の糖濃度が保たれるのです。

この糖濃度の範囲が、正常な血糖値とされるところであります。



であるならば、この肝臓の門脈の血糖値を測れば
人間の生理的には「完全に正しい血糖値」が測定できるわけですが、
この肝臓の門脈というのが、
内臓の奥深くにあるために、身体の外からの測定が困難。

この肝臓の門脈の場所、探してみてください。

門脈

上には肝臓、下には腸。お腹側には胃、背中側にはすい臓と、
四方を臓器に囲まれた身体の奥深くにあるのです。

現在、この肝臓の門脈の血糖を“簡単に”測定する方法がないのです。



生命へのリスクなく安全で、
誰にでもできる簡単な測定、となりますと、
やはりそれなりの「限られた条件の元での測定」でしかない、
ということでありまして、
それらが示す結果は当然ながら数値としては「絶対」ではありません。

ただ、「絶対」ではありませんが、この検査値は、
患者さんの普段の生活の時間帯によって血糖がどう動いているのか、
~高い傾向にあるのか、低い傾向にあるのかという、
血糖日内変動を把握する上での目安となります。

この目安が、
今、コントロールを乱す原因となっている問題点をつきとめる上で、
とても有益な手がかりになります。

「目安」とはいえ、その利用価値は非常に高い!!
このメリットを十分に活用していきましょう!ということです。

これが、ご面倒でも患者さんに簡易血糖測定器で血糖を測定いただく理由になります。




陣内病院においては、国内で販売されているすべての血糖測定器をご用意していますが、
その採用にあたっては、
まずは当院の臨床検査技師が、同じ静脈血からの比較測定でその精度を確認します。

そこで、その後の診断に支障を来すほど大きな誤差が認められなければ
病院で貸与する測定器として継続採用します。

SMBG_20111115093417.jpg

ちなみに、この院内でのチェックで不採用となった商品、実は過去にあります。
ただ、その商品については、当然の成り行きとしてその後の市場評価も低く、
早期に販売が終了して市場淘汰されてます。

結果、現時点で国内で流通している分については、不採用とするような商品はないです。
まずはどれも安心して使っていただいてよろしいかと。



で、その中から我々が個々の患者さんにお勧めする際の選択の基準としては、
‘操作ミスによる測定誤差’という要素を極力排除し、
‘測定が負担なく継続可能である’ことを目的として、
「その方が一番間違いなく操作できて使いやすい機種」
ということを最大の選択基準とし、
2~3の機種を使ってみていただいて、
ご本人が操作しやすいと思うものを継続使用いただいています。

その後も、測定値にバラツキや偏りが生じないように
それぞれのメーカーさんの方法でのメンテナンスを定期的に行なって、
新品の状態の測定精度が保たれるようにしています。

時々外来で、「次は血糖測定器持ってきてくださいね」とお願いしていますのは、
この作業を行なうためです。


こうして測定器の機械としての動作の正確さを保った状態で、
患者さんに測定いただいた血糖値を、
おおよその血糖日内変動を把握し、
今行っている治療の効果を確認し、
今後の治療方針を決めて行く際の
「手がかり」として活用していきます。

P1090721.jpg


糖尿病治療においては、
こうした様々な検査機器の特性や、誤差の要因を勘案しつつ、
それに加えて、血糖以外の様々な検査や、
患者さんから聴き取った体調変化をつきあわせ、
そこから個々の患者さんの血糖日内変動をイメージングして参ります。

そこでイメージングした患者さんの血糖日内変動を
健康な状態の血糖変動にできるだけ近づけられるように
薬の組合せや処方量、タイミングを検討し、
個々の状態に応じたコントロール方法を組み立てていく、というのが、
現段階での糖尿病治療であります。

さらには、この辺の複合要因を総合的に診断し、
限りなく『完全に正しい血糖値』に近い血糖日内変動のグラフを描くことができるのが
「糖尿病専門医」の経験と腕、ということになるかと思います。

従って、良好な血糖コントロールを実現するためには、
患者さん個々の生活リズム、生活動作の中で、
血糖変動をもたらす様々な要因を把握することが大事になってきます。

わけても、ご本人の 感覚 というのはとても重要です。
食事や運動の状況、体調変化や、何か気になることがありましたら、
細かいことでも遠慮なく主治医の先生に相談されてくださいね。

主治医の先生に言いにくいことでしたら、看護師はじめ医療スタッフがお伺いします!

問診2

血糖値は、
患者さんと医療スタッフとの
こうした共同作業によって初めて
『完全に正しい血糖値』に近づいていくのです。








・・・と、非常に、長々と書き連ねましてすみません。
ここまでしっかり読んでくださったあなたは偉いっっ!!!(笑)。

しかしながら、「血糖測定器って本当のところどれがいいの?」の質問に対して、
背景事情含めて、わかりやすくお答えしようとすると、
どうしても、この長さにはなってしまうんですね。

結果、簡潔にお答えしようとすると、
「どれを使っても大丈夫ですよ。簡易血糖測定器はあくまで目安ですから」
という一言に集約されてしまいがちなんですが(汗)。

これまでこの言葉で今ひとつ腑に落ちてなかった方々が、
これにてお手元のガッテンボタン(笑)、押していただけるならば、幸いでございます。



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プロフィール

医療法人社団陣内会 陣内病院(じんのうちびょういん)

Author:医療法人社団陣内会 陣内病院(じんのうちびょういん)
1977年創立。平成24年で開院35周年を迎えました。
「糖尿病のある豊かな人生」を診療理念のもと、地域の糖尿病治療センターとして、糖尿病の診療と研究、啓発教育事業などに力を注いでいます。

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